世界新記録樹立
『 世界記録樹立を顧みて 』
山 崎 弘
(ライト級 S 35年卒)
1959年 第14回 国民体育大会(東京大会)
日本初の世界記録樹立 J160㎏
遂に世界記録が出た。
この日の来るのを我々はどんなに強く待ち望んだことか。
ひとたび世界記録が出てはじめて我々の日頃の努力成果が認められるのだ。
この大記録が樹立された瞬間から次第に興奮も静まり、落ち着いて160Kまでの過去を顧みて、
出るべくして出したのだと言う事を改めて強く心に銘記することが出来た。
ジャーク160Kの世界記録樹立するまでの、山崎の文字通りの血の出るような努力。
そしてOB始め主将、主務以下部員の全てが世界記録を目標に、どれだけ墝まぬ努力を重ねて
来たか、我ながら良くやった、良くやってくれたとしみじみ感じる。
この喜びを静かにじっと噛みしめて、繰り返し繰り返し味わってみる心。
しかし嬉しさや愉しみの陰にはそれに増した苦難が必ず待っている。
そのことを決して忘れまい。
新記録とは、人間の力の不可能性の限界を示しているのではない。
可能性の限界を示しているのだ。
山の高さには限りがある。
海の深さも又しかり。
しかし重さの記録は無限である。
ひとたびうち樹てられた記録は、人間何十億の目標としておそらくいつかは破られる事であろう。
それが明日か来月か来年かは判らない。
世界記録を出したからと言って、我々の目標がそこで終ったのではないのだ。
苦難の道はこれから始まるのだ。
チャンピオンがチャンピオンで有る為には、普通人には決して理解出来ない苦難が有る。
その苦難を我々は皆で分かち合い援けあって、より強くより高く進んで行かなければならない。
s31年卒 神谷 務夫 筆